8月11日(土)、12日(日)の両日、ローカル鉄道・地域づくり大学・サマースクールの第1回を開催しました。参加者は、関東を中心に福岡から仙台まで全国各地からの20名。講座名が的を得ていたのかもしれません。その80%以上が単なる鉄道ファンではなく、鉄道および地域活性化に興味を持つ市民活動家や研究者の方々などでした。「地域活性化について学びたい」「実際に行っているローカル鉄道の存続支援や経営支援についてより深く学びたい」「ひたちなか海浜鉄道が培ってきたノウハウを取り入れ、支援につなげていきたい」などの声がありました。では、そんな志を持った参加者の方々によって白熱した2日間の様子を振り返ってみたいと思います。
公募社長・吉田から、鉄道経営を目指す人たちへのエール
自らが公募でひたちなか海浜鉄道の社長となった吉田千秋が、鉄道会社の経営に必要な知識・経験を、自らの体験を含めてお話します。鉄道経営の基礎となる会計知識、自治体や住民との関係性づくりなどのレクチャーのほか、鉄道経営者にとって大事なポイントをお伝えします。
臨時列車のダイヤを引き、翌日実際に乗車してみよう
おそらく全国で初めての試み。主催させていただいた私どもは「与えられた条件下では答えはひとつのみ」と考えていましたが、ふたを開ければ途中駅で撮影のため停車する、震災復旧現場を徐行するなど、私どもの固定観念をはずれた予想もしないアイデアが多数飛び出し、これらを可能な限り詰め込んだ運行となりました。
フィールドワークでは、普段は入ることができない、ひたちなか海浜鉄道の車輌基地を見学いただきました。那珂湊駅の1番線から列車に乗り込み機関庫内へ移動。現役の運転士・整備士から話を聞く機会を設けました。ブレーキ操作の手順やドアの開閉などの基本的な操作から始まり、エンジンのかけ方。そして、その構造的な理由などを参加者の方々に学習いただきました。
「ローカル鉄道と地域活性化について」地元市民が中心となった支援団体「おらが湊鐡道応援団」団長の佐藤彦三郎さま、市民協働をめざす「NPO法人 未来ネットワークひたちなか・ま」理事長の高島洋平さまをお迎えし、廃止阻止と存続後の支援についてディスカッションをしていただきました。応援団の運営するfacebook が月間20万アクセスを超えているなど「素人ばなれ」した支援状況や、高島さまの「市の活性化は湊線も軸」などの発言を通して、参加者の皆様には、市民と一体となったローカル鉄道の活性化の実例を肌で感じていただきました。また、これを受け「死に体とならない組織の作り方」など、時間ぎりぎりまで質疑が続く熱の入ったディスカッションとなりました。
サマースクールの最終講義は、ワークショップ「 ローカル鉄道地域づくり大学に対する提言」。参加者の方々にこの2日間を振り返っていただきつつ、来年のローカル鉄道・地域づくり大学の開校に向けてアドバイスをしていただきました。具体的には、約10分間のグループワークの後、グループ単位で発表。「全国のローカル鉄道の経営分析をもっと詳細に知りたい」「市民団体とのやりとりの具体的なノウハウを知りたい」「応援団のノウハウのカリキュラム化」「参加者レベルに合わせたテーマの設定」などの提言をいただきました。
また、今回の参加者の中から希望者を集い、facebookグループを作成します。目的を共にする同士として情報発信・意見交換等を継続して行っていき、今後、ローカル鉄道の経営者が必要とされた際には、こうしたネットワークを利用して有益な提案・人材推薦を行っていくことも視野に入れています。
人材育成をめざす当ローカル鉄道・地域づくり大学の発起人であり、今回の学習のフィールドでもあるひたちなか海浜鉄道の代表をつとめる吉田千秋はこう話しました。「募集当初は鉄道ファンも相当参加いただけるものと見込んでいましたので、臨時ダイヤ作成や車庫見学などマニアックな部分にかなり時間を割いたプログラムを組んでみましたが、実際にはまちづくりや鉄道の活性化に取り組む皆さんがほとんど。
『それなら、座学にもっと比重を置いた方が良かったかな』と反省しつつも、実際には普段見られない鉄道の現業部門を体験できたことは概ね好評だったようです。とはいえ、このあたりは反省材料。次回はターゲットをしっかり絞ってプログラムを組まなければいけません」。今回開催する全3回のサマースクールを通して、まちづくりと一体となったローカル鉄道経営を担える人材育成のための道筋を立てていきたいと考えています。また、目下は、初回の経験を生かしつつ、第2回・第3回の開催に向けて準備を整えていきたいと思います。